閣議決定で「意義ある」とした「桜を見る会」はその後、開催されていない 文箭祥人

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7月22日、政府は安倍晋三元首相の「国葬」を行うことを閣議決定した。

閣議の議事録が首相官邸のHPに掲載されている。

木原内閣官房副長官:一般案件等について、申し上げます。まず、「故安倍晋三の葬儀の執行」について、御決定をお願いいたします。本件は、葬儀は国において行い、故安倍晋三国葬儀と称すること、令和4年9月27日に日本武道館において行うこと、葬儀のため必要な経費は国費で支弁することなどとするものであります。

冒頭の写真は、この日、首相官邸前で行われたデモ。国民の「国葬反対」の声が起こる。

ある日、テレビを見ていると、著名なコメンテーターが「閣議決定は重いものだ」と話し、コメントをすべて聞くと、閣議で決まられたことは変わらないからどうしようもない、と感じた。直後、月刊風まかせメンバーの松井寛子さんから電話があった。

「このコメンテーターの話を聞いて、『エッ!』と思った」

電話は月刊風まかせの編集ミーティングと変わる。

「閣議決定しました」と見聞きするが、「閣議決定」をきちんと理解しているのだろうか?調べると、次のことがわかった。

2019年にさかのぼる。

安倍晋三元首相の後援会関係者が多数招待され、大きな社会問題となった「桜を見る会」。

2019年10月15日、政府は、野党の質問への答弁を閣議決定した。その内容はこうだ。

「桜を見る会」は、内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものであり、意義あるものと考えている。

政府は「桜を見る会」について、「内閣として意義あるもの」と閣議決定した。

およそ1か月後の11月13日、当時の菅官房長官は記者会見で、「首相主催の『桜を見る会』について来年度は中止する」と表明した。

これに対して、野党が政府に対して、「中止する理由は何か」と問い、「閣議決定で『桜を見る会は意義あるもの』としたが、『意義あるもの』の認識を撤回すべきではないか」と迫った。

政府は11月26日、答弁。その内容は以下だ。

「桜を見る会」は(中略)意義あるものという考えに変わりはないが、様々な御意見があることを踏まえ、政府としては、招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討し、予算や招待人数を含めた全般的な見直しについて幅広く意見を聴きながら行う必要があると考えており、今般、令和二年度の「桜を見る会」は中止することとしたところである

2019年10月、「意義あるもの」と閣議決定した「桜を見る会」はその後、菅政権時代も岸田政権に変わっても、開催されていない。

先のテレビ番組のコメンテーターは国葬の閣議決定についてコメントする際、「桜を見る会」の閣議決定に触れなかった。

8月後半に行われた毎日新聞の世論調査で「国葬反対」が53%、朝日新聞は「反対」50%。読売新聞が9月に入って行った世論調査では、「反対」は前回の46%から56%になった。「国葬反対」の声はさらに広がっている。こうした中、政府は閣議決定そのままに、「国葬」を行うのか。

◆2022年7月22日、閣議決定

https://www.kantei.go.jp/jp/content/040722gijiroku.pdf

◇2019年10月15日、政府答弁

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b200007.htm

◆2019年11月26日、政府答弁

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/200/touh/t200060.htm

◇ぶんや・よしと  1987年MBS入社。2021年2月早期退職。 ラジオ制作部、ラジオ報道部、コンプライアンス室などに在籍。 ラジオ報道部時代、福島原発事故発生当時、 小出裕章さんが連日出演した「たねまきジャーナル」の初代プロデューサー

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