自分の意志で生きるー『詩人iidabii  ある宗教2世の記録』 園崎明夫

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 親が帰依する宗教の教えや戒律のもとで少年時代を過ごした後、一人教団を離れ、いまは朗読詩人として活躍する「宗教2世」iidabii(イーダビー)の言葉と人生を記録したドキュメンタリー。実に切実な思いのこもった、そして苛酷な現実を記録した作品です。そして観客自身の人生の選択や親子関係、家族、もちろん宗教観に想いを至らせる力のある見事な作品だと思います。

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 自分の意志で特定の宗教を信仰する「宗教1世」には信教の自由があって、つまり自由に生きる権利が法律で保障されています。ところが1世のもとに生まれた子供達、いわゆる「宗教2世」たちは、親の信仰に基づく生活を離れて自由に生きる権利をあらかじめ奪われていると言ってもいいのでしょう。現実問題として、親の信仰の影響下に生まれ、その価値観や生活規範の中で育つことでしか生きられないのですから。自由に生きられないという以上に、その宗教特有の厳しい戒律ゆえに、児童虐待ともいえる境遇が日常になっているケースもあるようです。映画冒頭の二つの朗読詩が主人公の心を観客に向かって叩きつけるように響き、宗教2世の逃れがたい被害をもっと大きな社会問題として捉えるべきと訴える強い力を持った社会的な告発作品と言えます。

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 それは2022年に安倍首相襲撃事件が起こった後、旧統一教会解散に向けて、当時様々な発言や活動をされマスコミにも多く取り上げられた、宗教2世小川さゆりさん(仮名)たちの主張とも繋がるものでしょう。また、映画にも登場する、ご自身も宗教2世である漫画家・菊池真理子氏の作品『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』(文藝春秋刊)でも、優しく深く厳しく告発されています。宗教2世たちの人生を描いたノンフィクション・コミック短編集全7話の第1話がiidabiiの話です。また、今年春公開された、森七菜主演の映画『炎上』はカルト教団の親から逃走した少女の物語で、「宗教2世」の境遇が、極めて重大な社会問題であることが迫ってきます。

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 また『詩人iidabii ある宗教2世の記録』という作品からは、社会問題の告発という範疇を超えて、主人公iidabiiの朗読する詩やインタビューや日常の行為から、信仰とは何か、家族(とりわけ親子関係)とは何か、自由とは何か、人間性とは何かといった、人として根源的な幾つもの問いが噴出してきます。そして、その問いに対する答えの一つが、詩を朗読するときの激しさとは対照的な、普段の穏やかで優しいiidabiiそのひとの落ち着いた存在感であるというような不思議な感銘があります。その詩の朗読と彼の人間性が表現するのは、まさに幾つもの問いの真っ只中で「生きる勇気」のごときものでしょう。彼は中学3年生の冬、親の信仰する教団から脱退することを自ら決意しますが、その境遇は、教団から排斥され、親族友人との普通の人間関係を断つというものであったと語っています。その孤独の中で、自分のしたいこと、詩を書き朗読するという表現行為があってこそ生きられたと。「勇気をもって、自分の意志で生きる」という事のかけがえのない意味を伝えてくれる作品なのだと思います。

●総合デザイナー協会特別顧問 園崎明夫

〇『詩人iidabii  ある宗教2世の記録』は東京・シアターイメージフォーラムにて公開中! 7月25日(土)より大阪・第七藝術劇場で公開!公式サイトは以下のURL。

https://www.mettle.co.jp/iidabii/

なお、冒頭の写真のコピーライツは c2025 Media Mettle, Inc. All rights reserved

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