大阪のメディアを考える「大阪読売新聞 その興亡」92 編集委員編③ 安富信

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  この連載も終盤を迎えている。最近、執筆が滞りがちだったのには理由があります。何人かの読者から「次まだですか? 楽しみにしてるんですよ」と言われました。うん、わかっています。ありがたいことなんですが。

目次

屈辱の事件 書くか書かぬか

 その理由は、この編集委員時代の5年弱の間に、筆者が思うに大阪読売新聞社会部にとって3大屈辱の1つになるような出来事があったからだ。しかし、筆者が体験したことではない。横目で見ていただけだ。20年近く経って今更蒸し返すべきか? 読売関係者に聞いてみた。賛否が分かれた。会社の中枢を担った人は「そんなもん、書くな」と言い、無言で筆者との接触を避ける人もいる。逆に、「これを書かないで、何が『大阪のメディアを考える 大阪読売新聞の興亡』なんや!書いたらええねん」と正論を吐く人も。
  そもそも、大阪読売の経営中枢に携わった人たちは概ねこの連載に対して批判的で、早く辞めた人や直接の関係者ではない人は面白がっているようだ。当たり前の事かも知れないが、経営中枢にいた人たちにとっては、読売新聞の取材を捻じ曲げてしまったこの”事件”が、ある意味で経営に大きな影を落としてしまったのだから、蒸し返されたくない。  
 この連載は大阪読売の暗部も曝け出しているので、そういう人たちには面白くないし、無視したいようだ。筆者だって古巣の大阪読売は大好きだし、今でも30年以上お世話になった恩義は感じている。また、週刊誌との訴訟沙汰になっていたから、筆者としても出来れば書かずに済ませたかった。古巣から余計な抗議なども受けたくない、というのも正直な気持ちだ。

途中で消えたヤマダ電機追及連載

 長々と言い訳を書いて来たが、結論は、筆者は真相を知らない。裏でどんな事があったのか、知らないし、知る気もない。編集委員室で見聞きしたことだけが、筆者にとっての真実だ。だから、簡単に触れる。  
 2007年1月23日付の読売新聞記事で、LABI1なんば店でメーカー応援者(ヘルパー)に対する店側からの命令指示が行われており、職業安定法違反、二重派遣・二重命令にあたると報道された。店舗側がヘルパーに対してノルマを課し、営業報告書を書かせ「何件アプローチして何件獲得したのか、販売価格はいくらか」と徹底させ、成績が悪ければ罵声を浴びせたりするとされる。同支店だけでなく全国の店舗で同様の行為があったとする指摘もある。  
 ヤマダ電機は「違法な事実はなく報道には誤解が含まれている」と全面的に否定、読売新聞の取材方法にも問題があるなどと反論した。
  週刊文春2007年3月15日号・3月22日号の記事によると、一連の読売新聞報道について、ヤマダ電機から読売新聞社に対して折り込みチラシの出稿を差し止めるとの圧力があり、読売新聞社がこれに屈して2007年1月27日朝刊の12版まで出ていた記事を13版以降削除した、としている。読売新聞はこれを全面的に否定し、週刊文春に記事の訂正と謝罪を求めていた。  
 筆者の記憶では、1月27日の朝刊記事、確かヤマダ電機を追及する連載記事がスタートしたのだが、途中で消えたのは事実だ。この連載を指導した社会部幹部2人はその後、配置転換になった。そのうち1人は筆者がいた編集委員室に異動して来た際、「大阪社会部の恥だ」と吐き捨てたのも事実だ。以上。

豪雨災害時に夏休み取得、怒る編集局長

佐用町豪雨の現場

 これを書いたので、やはり筆者の恥も書かなければならない。今も痛恨事だ。2009年8月9日に台風9号の影響で兵庫県佐用町で死者・行方不明20人が出た豪雨災害が起きた。翌10日、災害担当編集委員としては、当然現場に駆けつけるか、少なくとも編集局で豪雨災害での紙面作りに参加しなければならない。しかし、夏休みで中学時代の友人と九州に鉄旅に出る日だった。  
 これも言い訳になるが、編集委員が編集局でどういった形で紙面作りに加わるか? 当時はシステムがなかった。それにしても、大阪本社管内で、豪雨災害で犠牲者が出ているのに、筆者は旅に出た。後で聞くと、編集局長は「安富はどこへ行った?」とお怒りだったという。当然だ。休みが終わって、罪の意識があったのか? 1週間後、佐用町に向かう三田市社会福祉協議会のバスに乗り、ボランティアに行った。ここで、あとずっとボランティアでお世話になるチーム神戸の金田真須美さんと出会ったのだが、それは、また後日に。ボランティアに参加したことを本紙のコラムに書いた。これが、筆者の初めてのボランティアだった。
 それ以前から、件の編集局長とは、「なぜ、災害関係の記事、解説しか書かないのだ」と注意され、仲違いしていたものだから、これを機に編集局長の心の中では「安富は要らない」となっていたのかもしれない。(つづく)

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