『レディ・オア・ノット2』ージャンルを超えた映画的快感が溢れる! 園崎明夫

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 ディズニーの試写で「レディ・オア・ノット2」、一足先に観せていただきました。徹底的に映画の面白さに溢れた、驚きのエンターテインメントです!大富豪の一族に嫁いだ花嫁が、新婚初夜の伝統ゲームで命を狙われるサバイバル・ホラー『レディ・オア・ノット』の2作目。衝撃シーンの連続で世界的にサプライズヒットとなった「凶作」が、さらなる狂気や残酷さをまとって公開されます!(一作目観ていなくても大丈夫!)

©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

 

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 この新作、「21世紀の無秩序で混乱した世界の中、一人の人間として真っ当に生きるとは?」というメッセージを新鮮で独創的な映像表現で描いた、完全無欠の娯楽映画でしょう。言わばスプラッタ・アクション・コメディ映画の傑作登場です!ジャンルとしては、差し当たりホラー映画で、作品の外見は一部のコアなホラーファン向けと見えなくもないかも。しかし、作品のテーマ・コンセプトは「弱肉強食の不条理な現代社会で、どんな苦難の中でも、傷ついても、人として倫理的に考え行動し、最後まで生き残る一人の女性の物語」でしょうか。いっけん荒唐無稽で奇想天外でかつ冷静な世界観と劇構造を持った緻密なシナリオ、的確なキャラクター造型、際立った映像センスで全編が構築され、さらに美術も衣装もメイクも特殊撮影も、さらにセンス抜群の音楽も含めて、すべてが映画の面白さ美しさに結実しているという、見事な映画作家の作品だと思います。自由自在(に見える)の演出やキャメラアングルが生み出す、目を見張るシーン、ショットが溢れています。

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 ホラー映画というジャンルを越えた、新世代映像アーティストの新作というべきかと思います。例えば、デヴィッド・リンチやタランティーノやパク・チャヌクがどんなにあり得ない設定の奇想天外で血に塗れた作品を撮っても、それはジャンル映画としてではなくて、紛れもない映像アーティストの作品として観られ評価されてきました。このマット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレットの監督デュオの新作にも、ジャンル映画にとても収まらないアーティストとしてのビジョンやテクニックが明らかです。本当の映画の力とでもいうべきものを感じます。ホラー映画ファンだけのこだわりの名作にしておくのは、あまりにももったいない!

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 前作のラストから続く、オープニングのショットから画面に引き込まれます。炎上する大邸宅から、血に染まったドレス姿で登場する主人公グレースが、今終わった命がけの惨劇を「家庭内のゴタゴタよ」と言い放つシーンがまず最高のはじまりです。その血に染まったドレスはもはや堂々たるモダンアート、というか、グレースとして映像化された女優サマラ・ウィーヴィングそのものが、その内面も含めて、動くアート作品といってもいいかもしれません。彼女は、どんな苛酷な危機的局面に遭遇しても、人間としての良心を失わず、妹フェイス(キャスリン・ニュートン最高です!)とはまるで良質なホームドラマのワンシーンのごとく、時に諍い、時に冷静な会話を交わす。そのキャラクター造型の美しさ、力強さに圧倒されました。

 

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 その衝撃のオープニングから、本編が始まって間もなく、世界の影の支配者ダンフォース(なんとデヴィッド・クローネンバーグ!)が、テレビ報道を見ながら、ある地域紛争を電話一本で停戦させます。一国の戦争状態を左右する力すら、グレースの敵となる彼ら支配者たちは持っているという設定。ダンフォースの跡継ぎである長女はグレースに対して「世界には善も悪もない。あるのは構造(システム)だけ」と言い放ちます。このセリフは重要です。かつて世界が、第二次世界大戦後の枠組みと東西冷戦という、ある意味国際的に共有される価値観や秩序のなかにあった時代は、世界の構造は、まだしも一般的に理解しやすかった。それがかなり表層的なものであったにせよ。しかし、いまやその枠組みは崩壊し、世界には依るべき規範も秩序もなく、ただ資本主義が行き着いた果ての構造(システム)だけが生きていると。言い換えれば「今の世界にはもう求めるべき理想や価値なんてない。強いものが勝つ。あるのは支配されるものとされるもの。または富めるものと貧しいもの。それだけ。」ということです。たしかに、この作品に描かれる世界は、極端に誇張され、戯画化されたものですが、一方で非常にリアルで的確に今の世界情勢を反映しているとも言えます。ならばこそ現代の映画として抜群に鋭く面白くなっているということでもあります。

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 近年制作・公開されている見応えのある優れた映画作品の立脚点は、まさに今の「世界」の構造と正面から向き合っている、あるいは向き合おうとしているところにあります。いま自分たちが暮らしている2020年代の世界とはどういうところなのか。その世界の中でどういう人間の物語が語り得るのか、登場人物はどんなふうに考え、行動するのか、どんなふうに他者と交わるべきなのか。現代の価値ある映画には必ず、そのようなテーマが根底にあります。たとえば濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』も、黒沢清監督の『黒牢城』もしかりです。そういえば『黒牢城』では荒木村重が「天下だと?そんなものは犬に食わせておけ!」と言い放つシーンがあります。余談ながら「村重」と「天下」との関係は、「レディ・オア・ノット2」における「グレース」と「支配者たち」との関係に近いものがあるように私は感じますが。

 それはさておき、いずれにしても、できるだけ多くの方に観ていただきたい、ホラー好きの方はもちろん、「ホラー映画はちょっと」という方にこそ必見の娯楽・アート作品としてお勧めいたします!

●総合デザイナー協会特別顧問 園崎明夫

〇『レディ・オア・ノット2』 8月14日(金)全国ロードショー

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なお、冒頭の写真のコピーライツは ©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

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