「井上廣子展」~Being in the Face+交差するまなざし~に寄せて 園崎明夫

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大阪心斎橋の美術画廊「Yoshiaki Inoue Gallery」で井上廣子の作品展が開催されています。井上さんは1992年から現代美術の作家としてアジア・北米・欧州で作品制作および発表をし、現在は日本とドイツを行き来しながら精力的に作家活動をしています。

今回の個展では、国家間の対立や内紛など様々な危機的状況から、やむなく祖国を離れドイツで難民として暮らす女性たちのポートレート作品を集めて展示されています。井上さん自身がドイツ各地の収容所で、アフガニスタン、シリア、アフリカ、ウクライナ等からの難民として暮らす女性たちと、寝食を共にするなどして信頼関係を築いた上で撮影された肖像の数々は一つ一つに彼女たちの人生の物語が宿っています。モノクロプリントの表面には厚くワックスがかけられ、さらにひび割れたクラック効果を施した作品群は、彼女たちのおかれた状況とその内面の苦悩をシンボリックに表現していて、難民収容所の外景写真が嵌め込まれた白い小屋のインスタレーションとともに観るものの想像力に強く迫ります。ぜひこの機会に世界的に活躍する井上廣子さんの世界に出会っていただきたいです。

井上廣子さんの言葉から
「ヨーロッパで暮らしていると移民や難民の歴史について考えざるを得ません。近年はドイツでの分断化を象徴する光景にも何度も出会いました。人間とは、歴史とは、教育とは何なのか自問する時間が多くなり、ドイツで難民として生活する女性たちのポートレートを撮りたいと思い、彼女たちと対話を重ねる中で、ドイツ入国前後にそれぞれの家族に多くの物語があることを知りました。文化や言語も違う国での生活。言葉にならない絶望や生への希求をどのように作品化できるのか。苛酷な暮らしの中でも笑顔を見せてくれる彼女たちの、過去の悲嘆から未来への歩みを表現できないだろうか。2025年現在の世界的に不安定な国際情勢下で生きる彼女達、私達の想いを作品に重ねたいと思います。」

作品展は11月8日(土)まで開催。開催時間、休館日など詳しくはギャラリーへお問い合わせください。

○Yoshiaki Inoue Gallery

●総合デザイナー協会 特別顧問 園崎明夫

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