『沖縄狂想曲』評 オスプレイの島 倉田剛

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 太田隆文監督『沖縄狂想曲』は期待以上の力作であった! 映画には頻繁にオスプレイが沖縄の上空を飛びまわっている。一機200億円するこの無用の長物は、騒音をまき散らしてこの島を我が物顔に飛ぶ。
 『沖縄狂想曲』は、沖縄がかかえる諸問題を丁寧に解説してくれるオキナワ入門映画である。監督の真剣な取材が、多方面の人たちへのインタビューでよくわかる。地元新聞の元論説委員から鳩山由紀夫元総理まで30人以上に及ぶ彼らの言葉に、まずは驚くのだ! れいわ新選組の山本太郎は国会で「日米合同委員会」について質問した。知らなんダ、知らなんダ! 映画がはねてから帰り一緒になった人と「オキナワのこと何も知りませんな~」と話したがそのとおりである。日本人が知らない沖縄の現実。いや、むしろ知りたくてもマスコミが報道しない、あるいは報道できないということであろう。沖縄の基地問題を知る大きな契機となるのが本作で、三上智恵監督の最新作も同様である。


 だが、沖縄は決してアメリカ=日本政府の言いなりになっていたわけではない。大田昌秀知事が目指した平和な国際都市構想のグランドデザインが実現していたら、また違った沖縄になっていただろう。映画で一番印象に残ったのはコザ暴動のパートである。1970年に起きたコザ蜂起ともいわれる出来事は、安保反対、沖縄返還を叫んでいた私たちの世代には、あまりにもインパクトがあった! だが映画で米軍の車両を炎上させたこのクーデターともいうべき状況で「黒人の車は焼くな」という証言があったということを知って感動に近い気がした。差別されている者同士の同じ境遇の想いがそこにあったのだ。

 『沖縄狂想曲』はあまりにもストレートな直球映画であり、完成度と映画的な構成には、もう一工夫ほしいが、そんなものを突き破って、見る者に訴える熱意がある。ナナゲイは平日にもかかわらず多くの観客で、パンフを求める人も多かった。沖縄を知ることが、自分の現実を知ることになると実感! ぜひとも見ていただきたい、いや必見です!

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〇くらた たけし
映画評論家。1950年、三重県生まれ。大阪の府立高校で国語を担当、2011年定年退職。第七藝術劇場企画アドバイザー、関西=ヤマガタネットワーク代表、市川準研究会代表。2021年より三重でジェンダーの視点からダイバーシティを映画で考える上映会や食の安全を考える上映会を企画。その他、市民向けの映画講座を担当。

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