タイトルが「チョコレートな人々」で、メインコピーが「温めれば、何度でも、やり直せる」で、これは「久遠チョコレート」をめぐる様々な人間群像を捉えたヒューマン・ドキュメンタリーなのだろうと思って観はじめましたが、このとても貴重な映像記録の本質は、やっぱり「夏目浩次」という経営者の思考と行動なのだろうと思います。
映画の進行に従って、彼の考え方や実践の在り方を見ていくことで、障害を持つ人たちとの共生について、考えるべきことがどんどん増えていきます。
もっと具体的にいえば、まず資本主義国家・日本にあって、「障害者雇用促進法」という法制度のありようと、夏目氏の事業活動との関係性について、私としては、多いに触発されるものがありました。
彼の温かい人間性やユニークな発想、勇気と行動力に感動しながら、一方で現実具体的な局面での法制度との関連性で、教えられることも疑問も(発展的な意味合いにおいてですが)、冷静に観れば多々あります。
普通に企業で雇用ということに多少なりともかかわったものであれば、事業者に課される法定雇用率と未達成の場合の納付金の意味合い、障害者雇用に関する厚労省の助成金制度の活用やその価値、最低賃金法に関わる問題(障害者とそうでない人の時間給格差の問題)、数年前に導入されたばかりの精神障害の人たちの雇用促進制度のありかた、障害者手帳の有無にかかわるデリケートな問題等々、障害を持つ人たちとその家族の人たちが、そして雇用する側の当事者が、まさに今直面し、個別に解決していかなければならない問題は山積しています。
障害者雇用促進法の理念と目的にまっとうに取り組もうすればするほど、困難は増えます。
この映画には、それらの課題を克服するための多くのヒントがあると思います。
「2021年日本民間放送連盟賞テレビ部門グランプリ」を受賞された映画の感想として、それはあんまり無味乾燥で見も蓋もないといわれるかもしれません。しかし、そもそも企業を持続的に発展させるとか、新しい人材を雇用するとか、ましてや障害を持つ人たちを継続して採用し雇用するということは、「パッション」や「ウォームハート」だけでやり続けられることではありません。
もちろん,それらがなければ、もっと無理ですが。
働きたい障害者の人たちと、彼らの雇用に困難を抱える事業者と、彼らと必ずどこかで繋がっている自分たちが生きる、この社会の事情を知るきっかけになるドキュメンタリーとして、とても貴重な映画です。
ほんとに多くの人たちに見てほしいです。
そのざき・あきお(毎日新聞大阪開発 エグゼクティブ・アドヴァイザー)
2023年1月2日(月)より
〔大阪〕第七藝術劇場 〔東京〕ポレポレ東中野
〔愛知〕名古屋シネマテーク、ユナイテッド・シネマ豊橋18
1月6日(金)より
〔京都〕京都シネマ、
ほか全国順次公開
●公式サイト https://tokaidoc.com/choco/
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