【1万件の生活相談から①】ずる賢い生活困窮者はいない  岡晃敏

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松原市会議員時代と現在の行政書士の業務を通じて、1万件以上の生活保護など、生活困窮者の相談を受けてきた。
世間では生活保護受給者に対して「仕事もしないで保護で食べているずる賢い者」というイメージもあるかも知れない。しかし、「ずる賢い生活困窮者はいない」というのが、私の確信だ。
折角交通費も立て替え、バスの予約もして、大阪で住めるマンションを用意しているのに、突然連絡が途絶え、消えてしまう者も少なくはない。
「今仙台駅にいます。住む所を失いました。1円もありません、たすけてください」とのSOSだったので、1万円振り込んであげ、バスに乗って大阪に来る予定だったが、振り込んだ途端に連絡が途絶え、消えてしまった者もいた。
せっかく住むマンションも決まり、生活保護が開始されたその日に保護費を持って家賃も払わず消えてしまう者もいる。
このように困った人間は少なからずいることも事実だ。しかし、そんなことをしても本人にとって絶対に得ではない。しかしそのことが理解できないだけだ。1ヶ月程度の保護費をポケットに入れて逃げたところで、直ぐに生活に行き詰まるだろう。
また、突然消える者のなかには多重債務者も多い。債権者の取り立てから逃れるためにある日突然いなくなるのだ。マンションの管理人に聞くと、こういう人物の所在をどこからか嗅ぎつけ、「その筋」の強面の取立屋が何人も訪れて来たという。どうして新しい住所を見つけてくるのかも不思議だが、裏社会と繋がった弁護士などを利用しているらしい。弁護士なら債権回収の業務を引き受けた場合、債務者の住所を調べるために、戸籍謄本や住民票を「職務請求」で本人の同意無しに取得できるのだ。
だから彼らは決して「ずる賢く」はないのだ。本当に「ずる賢い」人間は、決して生活保護を受けるような境遇にはならないだろう。きっと「ずる賢く」儲けて良い暮らしをしていると思う。そういう知恵がない人間が、派遣切りや病気、離婚等の不可抗力によって生活困窮者になってしまう。
「賢く」生活保護の道を選んでも決してハッピーではない。保護費の枠内では本当に最低限の生活を賄うのが精一杯で余裕は全くない。これは「賢い」人間のすることではない。
また、このように突然消える生活困窮者は、私が支援して大阪に呼び寄せた人のうち2割程度だ。決して少なくはないが、私の事務所の支援で「命拾いした」と感謝してくれている人が大半で、自立に向けてがんばっている。
「怠け者」という偏見が彼らを追い詰め、自立を妨げ、社会的コストとして、最終的には国民全体に跳ね返ってくる。
「困った人」も含めて抱きかかえる社会こそ「人間社会」と言えるのではないだろうか?(つづく)
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生活困窮者から1万件以上の相談を受け、生活保護や住居の斡旋などの支援してきた岡さんの経験をつづっていただきます。次回は1月上旬の予定です。【つづく

岡晃敏 特定行政書士・宅地建物取引士
1955年 大阪市旧南区生まれ
1978年〜1982年 大阪府松原市役所勤務
1982年〜4期16年 大阪府松原市議 その間「生活と健康を守る会」副会長
2012年 行政書士登録
市議、行政書士を通じて、生活保護など生活困窮者の相談・依頼件数は1万以上
①生活保護、住居の紹介、斡旋、②各種許認可申請 ③補助金、融資等の申請業務を中心に活動

 

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