能登ワイン コスパ抜群の国産ワイン

  • URLをコピーしました!

 国産ワインは一般に高価で味が薄い。手頃だと思ったら、外国産のブドウ果汁をつかっているところも多い。でも2011年に取材した「能登ワイン」はちがった。能登産のブドウだけでつくる加熱処理をしない生ワインは輸入ワインに負けない香りと強さがあり、値段も2000円以内(当時)と手頃だった。

目次

荒れた開拓農地を活用

10本の醸造タンクでワインを生産=2011年

 2003年の能登空港開港をひかえ、めだった観光資源がなかった穴水町が特産品をつくるため「北海道ワイン」(小樽市)を誘致したのがはじまりだった。荒れていた国営開発農地で01年からワイン専用品種のブドウを栽培しはじめた。
 だがまもなくワインブームは去り、「北海道ワイン」は醸造所の建設を断念する。畑にみのったブドウは北海道でワインに加工したが、収穫から1週間かけて運搬するあいだにコンテナ内で発酵していることもあった。
 せっかくの地元のブドウを活用するため、穴水町と農協、民間企業が出資して04年に醸造会社の「能登ワイン」を設立し、06年に穴水町が3億2000万円(半額は国費)かけて醸造施設を建設した。
 湿気の多い能登は本来ブドウの栽培にはむかない。土壌の水はけもよくない。家畜のふんやカキ殻の粉を土に混ぜ込むなどして土壌を改良してきた。
 当初は「能登にブドウなんてあるの?」「キウイかブルーベリーの果実酒じゃないの?」といった反応ばかり。スタッフはブドウ畑の写真をもって金沢市のデパートなどを営業にまわった。

瓶詰めの様子=2012年

 少しずつ品目を増やし、ヤマソービニヨンやシャルドネ、セイベルなど8品種の名を冠したワインを売りだした。
 2011年現在は、関連会社の「能登ワイナリー」と地元農家が計18ヘクタールの畑で14品種のブドウをそだて、約100トンのブドウから年間10万本のワインを生産している。能登の原料だけをつかった生ワインは次第に評価がたかまり、「国産ワインコンクール」で08年から3年連続で銅賞を受賞した。
 会社は設立以来赤字がつづき、約6000万円の資本金も底をつきかけたが、2010年は600万円の黒字に転じた。地元企業と連携して、ワインの搾りかすをつかったセッケンや菓子、ジェラートなどを開発するうごきもでてきている。
 かつて町役場でワイン工場誘致にかかわった「能登ワイン」の新田良孝常務(67歳)は「能登産にこだわってまじめにつくってきた。今後は、能登牛などの地元の産物とくみあわせて販売したり、熟成させたワインも手がけたりしていきたい」と話してくれた。

2011年

国産品種ヤマソーヴィニョン

 フランスの赤ワイン用品種のカベルネ・ソーヴィニヨンと山ブドウを交配した日本生まれの品種ヤマソーヴィニヨンでつくる赤ワイン「ヤマソーヴィニヨン」が「能登ワイン」の看板商品だった。2000円弱(当時)なのに、辛口でしっかりした酸味と果実味もかんじられておどろいた。
 私は、北陸の醸造所の国産ワインもかたっぱしから味わってみたが、値段と味のよさのバランスが、能登ワインは抜きんでていると思った。
 2024年正月の能登半島地震で「能登ワイン」の施設も被害をうけたが、5月の連休前には店を再開した。

2025年12月

 25年11月、輪島で会った友人に「能登ワインはそのへんの国産ワインとはちがう。以前にくらべても圧倒的においしくなってるよ」といわれ、15日に解禁したばかりの「能登ワインヌーボー」(約2000円)と、樽で6カ月熟成させた高級ワイン「心の雫」(約3500円)を道の駅で購入した。
 同程度の値段のボジョレーヌーボーは何度か飲んだけど、「能登ワインヌーボー」のほうが香りが高くて味が濃くてはるかにおいしい。

 「心の雫」はミディアムボディなのに、味の幅が広くて、しっかりしていて、脂ののった肉料理にもよく合った。
 被災地支援という意味を抜きにしても抜群においしいワインなので、多くの人に味わってもらいたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次