人間は誰しも幸せになるために生まれてきたものだと思う。
「幸せ」とは対角線上にあるように見える、派遣切り、雇い止めで職も家も失い、ホームレス寸前で助けを求めてきた人たちの支援をしていても、尚、そう感じる。
名前は、子の幸せ願う親の愛
豊、健一、貴光、真耀、福子、将志、洋子、ひろみ、香代子・・・
最近生活保護申請を行った人たちの名前だが、みんないい名前だ。豊になること、健康に育つこと、洋々とした人生を送ること・・・。一人ひとりの名前には、精一杯将来の幸せを願った名前が付けられている。嫌々適当に付けたような名前なんて一つもない。
生活保護の申請書を書くために、依頼者の生まれてから今日に至る経過を簡潔にだが聞き取っている。僅か1時間程度の時間で聞くことのできることは極々人生の一部であり、言いにくいことは敢えて聞くことはしないようにしているが、それでも今までの人生の概略程度は知ることができる。
将来の幸せを願って、生を受け、名前を授けられたにもかかわらず、こうなった原因は、何と言っても「貧困」、つまり人生のいままでで、安心して過ごせる家と家庭、食べるに困らない収入、こざっぱりした服装、つまり衣食住が満たされてこなかったことが原因だったと感じる。
貧困→低学歴→ブラック企業→派遣→孤独
相談者の中には、生まれたときから両親の顔を知らないという人も珍しくない。物心ついたときには施設に預けられていたので、両親の名前も知らないし、記憶も当然ない。離婚や失業等々育てるにも育てられない何らかの理由があったのだろう。
成人するまでに両親が離婚し、母子家庭(父子家庭)で育ったという人も多い。親からの虐待もよく聞くことだ。
こういう環境だから、学歴は高卒、高校中退の人が多い。
高卒の場合は一応最初は正社員として就職するのだが、所謂ブラック企業が多く、長続きしない。正規雇用といいながら、直ぐに辞めることを想定して常に募集している。こういうところでも「進路指導」で「狼の群れ」に18歳の子どもが送られているのだ。
高校中退組は最初からアルバイト、契約社員、派遣社員というのも多い。そして何回か非正規雇用を繰り返しているうちにもう二度と正規雇用、正社員の道は閉ざされていく。
ネット上には、「寮費無料、誰でもできる仕事で月収40万も可能」等という派遣会社の広告が溢れている。折角住居を確保し、生活保護の申請もしたのに、こうした広告を鵜呑みにして、突然消える者も沢山いる。しかし、又々雇い止め、解雇を繰り返し、結局又生活保護に戻ってくる。全国の工場に派遣され、住むのはワンルームのマンションか会社の寮。これを繰り返していく中でどんどん年を取り、年を取る度に解雇、雇い止めのリスクは高まり、最後は孤独な生活と死が待っている。一生配偶者も家族というものを持たずに自分の子を抱くことも無く、可愛い孫の顔を見ることも無く人生を終える・・・。希望のかけらもない。こんな青年が日本だけでも何人いることだろう。
せめて、いままで衣食住が足りていれば、家の環境にかかわらず必要な教育を受けてきたら、収入は少なくても全国を転々としなくていい安定した職業に就いていたなら、いまのような事態には陥らなかったのではないかといつも思うのだ。
空家70万、食品ロス570万トン、衣服の半分廃棄……無料配布を
ではこの社会、この日本に全国民、日本に居住する外国籍の人々も含めて、「能力に応じて働き、必要最低限のモノは自由に手に入る」だけの「富」は無いのか?といえば、実は十分過ぎる程にあるのだ。
空家は 70 万 9,400 戸、日本で年間廃棄れる食品、いわゆる「食品ロス」は570万トンもあるそうだ。単純計算すれば、日本国民全員に45㎏以上、毎月4㎏の食料を無料配布できるだけの量である。衣類も同じだ。1年間で29億着の衣服が供給されているが、半分以上の15億着が売れ残って廃棄処分されている。
家の無い人には空家を、お金の無い人にはそのままでは廃棄される食料と衣料を好きなだけ配ってあげればいいのではないか?
コロナ渦の下で、家を失い、給与が激減し、「来月の家賃を払う目処が立たない」、「持ち金はあと数百円」こんな相談が毎日寄せられる。こういう状態におかれたら、人間だれしも頭がおかしくなる。児童虐待や放火殺人事件など、新聞を読むのもいやになる事件も相次いでいる。マスコミも「犯人」がいかに酷い人物かをこれでもか、これでもかと報道する。当然犯人が許される訳では無い。しかしこうした事件はいくら犯人を非難したところで無くなるものでは無い。こうした犯罪が起こる「背景」をこそ根絶することが必要だ。その為には、少なくとも、「貧困」から全国民を解放することが必要だ。
「政権交代」だけでは「お任せ民主主義」、貧困解決へ国民が主体に
その為には何が必要か?
「だから政治を変えなければ」「政権交代が必要」だと言うだけでは解決しないだろう。「政治を変える」も「政権交代」も要は、国会の各政党の所属議員の構成を変えるだけのことで、「お任せ民主主義」の延長線では無いかと思う。「自公政権」の下でもやれることは沢山有るはずだ。今日明日、住む家も食べるモノも無い人は「政治が変わる」まで待っている訳にはいかない。
岡行政書士事務所では、家を無くした人に空家を紹介し、当面は生活保護の住宅扶助で家賃を払ってもらっている。空家で悩む大家さんにもメリットがあり、喜んでもらっている。遠方の人には大阪まで来るバス代も立て替えてあげているが、名古屋からなら2千円程度、東京・関東からでも5千以下の料金だ。
フードバンクと提携して、生活保護申請から支給までの期間の為に、食料を配っている。1ヶ月は十分食べていける量なので、大変助かっている。
たかだか小さな行政書士事務所の小さな小さな取組だが、それでも助かっている人、これで人生の再生に向けて再出発が果たせたと喜んでくれている人も多い。別に無報酬ではなく、事業として成り立つ「ビジネスモデル」も確立して進めている。単なる「善意」だけでは長続きは難しい。
文具を無料配布する会社、15歳が起業
15歳の現役女子中学生が起業した「株式会社SOS(エスオーエス)」は、文房具や遊び道具などに企業ロゴ、QRコード、社名、URLなどを印字し、それをコドモのいる場所へ配布し、今後は「完全無料の実店舗を作りたい」と意欲を燃やしている。お店に来たコドモに、使いたいモノを無料で持って帰ってもらって、企業宣伝もできるというしくみだ。これならお金の無い家庭の子どもも好きなだけ文房具が手に入る。子どもも企業も喜び、「貧困問題」解決にビジネスで貢献しているのだ。
「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」活動で環境破壊も抑制
こうした取組を広げることも大切なことだし、工夫すれば誰でも可能なことではないだろうか?
かつてマルクスは「各人はその能力に応じて、各人はその必要に応じて受け取る」ことを「共産主義」の理想だと言ったが、いまの日本では資本主義の下でも部分的にせよその「理想」を実現する「富」と「生産力」は存在する。それをムダに廃棄することが地球環境を破壊し、人類の存続さえ危うくしているのだから、貧困を無くすことは地球環境破壊から地球と人類を救うこととも結びついている。
理想社会の実現は私たちの日々の営みからもアプローチが可能ではないだろうか?
株式会社SOS(エスオーエス)のHP(https://sos.jpn.com/)
おか・あきとし 特定行政書士・宅地建物取引士 1955年 大阪市旧南区生まれ 1978年〜1982年 大阪府松原市役所勤務 1982年〜4期16年 大阪府松原市議 その間「生活と健康を守る会」副会長 2012年 行政書士登録 市議、行政書士を通じて、生活保護など生活困窮者の相談・依頼件数は1万以上 ①生活保護、住居の紹介、斡旋、②各種許認可申請 ③補助金、融資等の申請業務を中心に活動
コメント