『哀れなるものたち』―比類なきエモーションの大渦巻へ引き込まれる、破格の「映画」体験!   園崎明夫

  • URLをコピーしました!

アカデミー賞10ノミネート、全世界で大ヒットを記録した『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーンが再集結。未知の驚きと未体験の感動に満ちた最新作。 風変わりな天才外科医、ゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手によって死から蘇った若き女性、ベラ(ストーン)は、世界を知るために、ダンカン(マーク・ラファロ)と共に大陸横断の冒険の旅に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.


全編すべてのカットが斬新で、美しく、奇想天外のストーリーは抜群に面白く、スクリーンの隅々まで強烈にエモーショナルな、並外れた作品だと思います。今までに観たどの映画とも似ていない体験。まだ観ていない人に「今すぐ劇場に駆けつけていただきたい!」、そんな言葉が躊躇いなく出てしまう映画です。「映画の面白さ」、「楽しみどころ」というのはいっぱいありますが、この作品はまさに別格!

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ストーリーと脚本の抜群の面白さ、思わず引き込まれる俳優の芝居、素晴らしく饒舌なキャメラワークと驚異の映像の連続、この映画の中にしか存在しない世界観を造る美術・セット・衣装のクオリティの高さ、すべてのカットがビジュアル・アートとして成立している凄さ、堂々たるポルノグラフィーの復権、懐かしきSFホラー・犯罪スリラーなどモノクロB級映画の豊かな世界が広がる映画の奥行。そしてヒロインの圧倒的魅力!そのすべての「映画的快楽」が、一本の作品に凝縮され、しかもまったく破綻なく、完璧な構図のなかに収まっているという、ほとんど奇跡的な作品だと思います。おそらく時が経てば、人によっては「オールタイム・ベストテン」級の作品になるのではないでしょうか。

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

また、映画史に残る傑作には、その「主演女優の存在あってこそ」という映画群があります。伝説的なアンナ・カリーナや、藤純子、若尾文子主演作品まで遡らずとも、2000年代以降でも、アン・リー『ラスト・コーション』のタン・ウェイ、イ・チャンドン『シークレット・サンシャイン』のチョン・ドヨン、デヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツなど、これら映画史上の傑作に彼女たち以外の主演女優が想像できるでしょうか。この世界の見方や感受性のあり方を、「映画」の力で変えてしまう歴史的傑作とヒロインたちです。『哀れなるものたち』という作品とエマ・ストーンという女優もきっとそういう存在になるのではないでしょうか。

さしあたり、アカデミー賞に注目しましょう!

〇そのざき あきお(毎日新聞大阪開発エグゼクティブ・プロデューサー)

●『哀れなるものたち』公式サイト 1月26日(金)より全国ロードショー

https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次