第7回角岡伸彦ノンフィクション賞&第1回西岡研介ノンフィクション賞発表会(後半) 〈悪いノンフィクション本もあるという話〉

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大阪・九条の下町長屋の本屋さんMoMoBooksで「春のノンフィクション祭り2024~第7回角岡伸彦ノンフィクション賞発表会~」が4月に行われ、角岡伸彦ノンフィクション賞と西岡研介ノンフィクション賞の発表会の模様を「月刊風まかせ」で紹介した。

第7回角岡伸彦ノンフィクション賞受賞作:『芝浦屠場千夜一夜』『僕の好きな先生』

第1回西岡研介ノンフィクション賞受賞作:『移民の子どもの隣に座る』

発表会では優れたノンフィクション作品を紹介したが、後半は一転して、悪いノンフィクション本を、角岡伸彦さん、西岡研介さんが取り上げる。司会はMoMoBooks店主の松井良太さん。その模様を報告します。

角岡伸彦

1963年、兵庫県加古川市生まれ。フリーライター。『カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀』(講談社)で2011年、講談社ノンフィクション賞受賞。著書に『被差別部落の青春』(講談社)、『ピストルと荊冠  〈被差別〉と〈暴力〉で大阪を背負った男・小西邦彦』(講談社)、『はじめての部落問題』(文春新書)、『ふしぎな部落問題』(ちくま新書)など。

西岡研介

1967年、大阪市生まれ。フリーライター。『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で2008年、講談社ノンフィクション賞受賞。著書に『襲撃 中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版)、『ふたつの震災 [1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社)、『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』(東洋経済新報社)など。

角岡さん、西岡さんは元神戸新聞社記者。角岡さんは5年間、西岡さんは7年間在籍し、そのうちの1年間はともに姫路支社に勤務。

角岡伸彦さん(右)、西岡研介さん

松井

ノンフィクションはノンフィクションでも、悪いノンフィクションもあるということで、話を始めたいと思います。

西岡

そやな

松井

20年振りに一緒にした仕事の話からいきましょうか。

西岡

嘘八百の百叩きですか。

松井

この本の説明は別にいいですか。

西岡

ちょうど10年前に亡くなられた、やしきたかじんさんの最後の妻の聞き書きという形で作家の百田尚樹さんが、これ以上のものは書けないといって、『殉愛』を書きました。TBSテレビの『金スマ』がこの本を取り上げて、大ブレイク、この本はウソばっかりやというのを、僕が初めて知ったのはネットで、大炎上し始めていました。

『殉愛』(著者:百田尚樹、発売日:2014年11月7日、幻冬舎)

松井

そもそも、この本はノンフィクション本として出ているんですか。

西岡

そうです。小説家が書くノンフィクションという形です。

角岡

帯にね、「誰も知らなかったやしきたかじん最期の741日」とあって、最後の妻が看病する、どんな看病をしていたのか、たかじんの最期はどうだったのか、つぶさに書いてある本ですね。ノンフィクションと名乗っています。

西岡

自称ノンフィクション。彼女とやしきたかじんさんの関係だけならよかったんやけど、彼女はやしきたかじんさんの資産を強奪することが基本的な目的だったので、それを邪魔する人たちは、この本の中で、足げに書かれていくわけです。マネージャーさんとか、お弟子さんとか、関係する人たちとか。彼女に味方する人たちは良く書かれている。ネットでこの本はおかしいということになって、検証せなあかんのちゃうかってなって。角岡さんはその前に『ゆめいらんかね やしきたかじん伝』を書いていたんです。

角岡

二ヶ月くらい前に出たんです、たまたまね。

西岡

それにも、この後妻の陰がちらつくんですよね。

角岡

取材依頼したけど、応じてくれない。

西岡

週刊文春は一回これをやろうとしたんですよ。その時、百田さんが文春に連載をしているから、つぶされて、その文春の担当者から、人づてに連絡があって、「これ、えらいことですよ、やりませんか」と声を掛けられて、「やりましょう」となって、1か月ぐらいで「百田尚樹『殉愛』の真実」をつくりました。

「百田尚樹『殉愛』の真実」(著者:角岡伸彦/西岡研介/家鋪渡/宝島「殉愛騒動」取材班、発売日:2015年3

月9日、宝島社)

松井

嫌な本を読まなあかんのは、しんどいと言ってはったじゃないですか。「『殉愛』の真実」は、お二人がメインで取材されて、取材は楽しかったということですが。

西岡

『殉愛』はウソばっかりやから、事実関係を確認すれば、打ち崩せていくわけなんで、こんなにおもしろいことはないわけ。たかじんさんが書いたとされる「温井メモ」というのがあって、母校の桃山学院に高額のお金を寄贈すること、後妻が生活に困るようであれば、そのお金を戻すこと、が書かれていて、けれども、このメモは偽造されていた、というところを突き詰めていく、そういう作業自体がおもしろかった。アメリカ人の英会話の先生だった元夫を、めちゃくちゃ優秀な先輩スタッフが見つけて、取材して、彼女の怖い話が出てきた。要は、関係者に当たればわかる。

松井

ノンフィクションはやっぱり、基本的にはちゃんと取材をして、本に出すという作業をする、そういうことをしていなかったら、わかるってことですよね。

角岡

わからんこともあるよね。『路地の子』は上原善広というノンフィクション作家が書いた本で、かなり怪しいねんやけど、それは僕が部落問題を取材しているからわかるけども、ほとんどの人は、ノンフィクションと名乗っている限り、わからへんと思うけどね。

『路地の子』(著者:上原善広、発売日:2017年6月16日、新潮社)

松井

読む側からしたら、ノンフィクションのジャンルに置かれていたり、その本がノンフィクションってなっていたら、信じますよね。

西岡

『路地の子』は名立たるノンフィクション読みと言われている学者さんとか著名な人たちが絶賛してたんですよ。角岡さんは、それをコツコツと打ち崩していく作業をして、それをブログでずっと綴ってはって、ほんまに孤軍奮闘やったんです。今では、『路地の子』はトンデモ本の種類に入ると認識されているのはすごいですよね。

角岡

自分の父親を描いた本で、その人が大阪の食肉関係の仕事をしてて、いろんな武勇伝であったり、何をやってもお金儲けが必要なんや言うて、バリバリいろんな商売に手を出す、親父の話です。

松井

息子が書くというのであれば、説得力がありますね。

西岡

彼は、被差別部落出身者という当事者であり、なおかつ自分の親族のことを書くから、基本的には彼がウソを書くって思てない。角岡さんが検証を始めて、なに事故ってんねんやろうと思って、読んだら、大事故してるやん。要するに、創作が入っている。そこは、彼特有の当事者性を使ったインチキだったんですよね。

角岡

父親の名前が仮名やとか、仮名が非常に多いなあ、というのがまず引っかかるところ。あと、水平社の活動家が90年代に出て来たりするねん。水平社って1922年に結成されて、その活動家が生きていたら90~100歳になるから、なんで、その活動家が登場人物で出て来るねんって、というところとか、ちょっと知ってたらわかるねんね。

松井

けど、何も知らずに読んで、説得力があれば、そういうことなんやとなると思います。

西岡

当事者性をひっくり返すのは、なかなかむずかしい。

角岡

屠場でけんかがあって、一方がピストル出したとか、一方は牛刀を持って襲いかかったとか、ドンパチがあるんよね。読んでたら、おもしろいかしれんけど、ほんまかいなあっていう話で、取材したら、全然そんな話はない。

松井

『ノンフィクションにだまされるな』の巻末に、お二人が話していますけど、取材対象者の名前を書くというのは、やっぱり、大事だとありますが。どういう理由ですか。

『ノンフィクションにだまされるな! 百田尚樹『殉愛』上原善広『路地の子』のウソ』

(著者:角岡伸彦、発売日:2019年12月26日、にんげん出版)

角岡

仮名にしたら、ウソを書いても、基本的に文句を言われない可能性が高いでしょ。例えば、僕が松井君のことを書くとして、僕がウソを書いたら、「角岡さん、ちゃいますやん!」と言われますよね。松井君じゃなくて別の名前を使えば、何でも書けてしまうよね。ノンフィクションでは、できるだけ実名で書くというのは、当たり前の世界です。主人公から仮名だとかいうのは、なんでやねん、小説にせえよという話やね。ノンフィクションって名乗る必要ないやんか。

西岡

子どもの名前まで出さなあかんのかというたら、読者からしたら、わかるわけやないですか。しんどい家の子どもまで何で実名で出さなあかんねん。こういう時にやるべきであって、主人公から仮名かい、何書いとんねん、という話になってくるんで。仮名にする必然性が全然わからへんから、そこんところに、悪い意味での創作が生まれる。

松井

この仮名の話と、会話が多過ぎることが引っ掛かるポイントだと言うことですが。

角岡

『路地の子』は40、50年前の、両親が結婚する前の会話がいっぱい出てくるねん。ほんまかなあとおもっちゃうね。

松井

会話はストーリーを展開さすには、すごくいい表現ではありますもんね。

角岡

ノンフィクションは、そないいっぱい出せないというか、ほんまにそんなこと言っているのかどうか、なかなか書くの、勇気いると僕は思うんやけどね。

西岡

例えば、『トラジャ』というのを書いたんですけど、その冒頭に、JR東日本の執行役員の一人が富田社長と深沢副社長に、「昭和の問題は、昭和で片付けて下さい」と言うシーンがあるんです。このシーンを確認するのに、どれだけやらなあかんか。1か月、2か月かかる。ウソやったらあかんわけですよ。どれだけ労力をやるのか、僕らからすれば当然の話なんやけど。会話がずっと続いていたら、会話しているところ見たんかい!というような話になってくる。

西岡研介さん

松井

西岡さんが打合せの時に話していた、『ストーリーが世界を滅ぼす』の紹介をお願いします。

『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』(著者:ジョナサン・ゴットシャル、訳:月谷真紀、発売日:2022年7月29日、東洋経済新報社)

西岡

滅茶苦茶、いい本です。アメリカの学者が書きはったんですけど。ものすごく単純に言うと、人間の脳は物語を欲している、だから、伝えたいことを物語にすれば、すっと入ってくる、フェイクニュースがはびこっているのは、基本的にはみんなが欲しているから、これにどう対処していくんか。この本はストーリー性を排しているから、読みにくい、すっと入って来ない感じなんやけど、滅茶苦茶、大切なことが書かれている本だなあと思います。最後は、名前を出すにも忌々しいって言って、トランプの名前を出さんと、トランプの悪口を永遠、書いてはるねんけど、この本、抜群におもしろいですよね。

松井

今回のノンフィクション本の話に通じる話ですね。

西岡

角岡さんがやってはるのは、本の一人ファクトチェックみたいな感じやないですか。今は、新聞でもテレビでもいわゆるオールドメディアがファクトチェックに取り組み始めている、世界的にも。この本は、この取り組みを悪いって言うてない、絶対必要だと言うてんねんけど、太古の昔から、人間の脳というのは引っ張られやすい、そういうことが書かれている、すごくおもしろい。

角岡伸彦さん

松井

角岡さんが今日、アカンかった本を持ってきてくれてはるんですけど。

角岡

僕、いっぱい本を読むけど、絶対読まんといて、という本もあんねんけど、それを言わんようにしています。人には好みがあるから。

西岡

要は、判断は自分でしてください、そういうところで、角岡さんは言えへんのやろうなあ。

角岡

人が言っていないけど、これは言うとかなアカンのちゃう、ということに関しては、ツイッター、今のXで、これちょっとまずいんじゃないのとか、ブログで延々、書いたりとかしますね。僕、本を買う時、あんまり立ち読みして買うたちではなくて、わりあい、すっと買っちゃうから、7,8割はOKなんやけど2~3割はどうかなあというのはあるわ。『潜入 旧統一教会』という窪田順生さん、徳間書店から出ています。タイトルにひかれたし、表紙も文鮮明夫妻の写真があるので興味を持って読んだけど、トンデモ本やった。ようこんなん出すなあって。韓国の統一教会の本部に行ったり、レジャー施設に行ったりして、楽しいとか、記者会見によう出て来る田中会長のことを書いたりしてるんやけど、要は、取材して、普通の人やったと。過激派であれ、右翼であれ、左翼であれ、普通の人のところあるよね。そういうところばっかり取材して、インタビューして、普通に書くって、なんのために、この本出したのと思うよね。

『潜入 旧統一教会』(著者:窪田順生、発売日:2023年11月29日、徳間書店)

西岡

ほぼほぼ情報操作ですよね、基本的には。要はスピンというやつですね。

角岡

潜入じゃなくて、広報を通して取材に行ってるから。「統一教会べったりだと思われてもかまいません」と書いてある。

西岡

潜入はだめですね、基本的に。

角岡

もう一つ『ネット右翼になった父』。ネットでまず見て、おもしろいなあと思った。お父さんが亡くなって、パソコンにネトウヨ関係のサイトが残ってたり、「正論」とか右派の雑誌があったり、父親がネトウヨやったかどうか調べていったら、結論はネトウヨじゃなかったと。著者の結論は、父親との関係がよくなかった、父親を理解してなかったと、父子関係の話に持っていく。社会問題をどんどん薄めていって、父子関係がよくなかったと結論付けてる。

『ネット右翼になった父』(著者:鈴木大介、発売日:2023年1月19日、講談社現代新書)

西岡

角岡さんが言うてるのもそうなんですけど、ライターの問題が一義的にはあんねんけど、編集者の問題って、ものすごく大きいと思てるんですよね。売れたらええんや、みたいなところで、「潜入」ってつけるのは、出版社が了解しとかんと、付けられないので、基本的には。それはね、すごくね、問われるべき問題、しっかりした編集者もいるんやけど、少なくとも少なくなっているのは事実ですよね。

松井

いい編集者って、どういう感じですか。

西岡

ライターの言うまま書かしとったら、僕はアカンかなあ、少なくともケンカはしますよね。この本、書いてくださいというような形になったって、どんなに仲にいい編集者だって、ライターと問題意識がぴったり一緒ちゃうわけなんやから、講談社は講談社で、文藝春秋は文藝春秋で、こういうふうな原稿にしてくれとか、本にしてくれとか、というのは当然あって、そこではケンカがあるわけですよ。そのケンカができる編集者が少なくなってきたかなあというよう感じはしますよね。

松井

ライターが書きたい本をそのまま出している。

西岡

編集者の勉強不足か、意識の低さか、なんか知りませんけれども、少なくとも、僕はこういうアホな編集者と会うたことがない。今でも付き合いがある編集者は、意見や思想信条が違ってても議論ができる。議論したら少なくとも、こういう本は生まれないんじゃないか、と僕は思っていますけどね。

松井

編集者がしっかりしていたら、こんなおかしな本は出ない。

西岡

トンデモ本って、昔から出ているから、アホはどの時代でも一定層おるから。加藤さんという元講談社の編集者がいるんですけれど、昔、加藤さんに「作家性がないんや、私をもっと出せ!」と言われて、ものすごくケンカしたことがあるんです。そういうケンカができるというか、信念があって、信念の方向は別として、それなりの信念があって、ぶつかり合うという形で本が出ていったら、たぶん、こういうアホな本は出てこえへんちゃうかなあ。

角岡

売れるっていうのが一つある。読者も変化してる。編集者だけで質が悪くなるわけじゃない。

西岡

もちろん。講談社で一時期、嫌韓本とか嫌中本とかを、わっとやり出した時があって、講談社の中から、それおかしいんちゃうか、というようなことが出た時があったんですよ。

角岡 

ケント・ギルバートね。

『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(著者:ケント・ギルバート、発売日:2017年2月21日、講談社) 2017年上半期の新書部門売り上げナンバーワンを記録した。

西岡

問題になりましたよね。それで、ちゃんと社内で問題にするというのは、しっかりしているなあと思いましたね。でも、逆に言えば、滅茶苦茶、売れた。売れるからええやんけ、という話も出てくる。

松井

売れちゃうというのは確かにね、求められているということかなあ。

角岡

書店も売れるから置くっていう悪循環になるからね。どういうふうに置くか、別の問題としてあるなあ。もう一冊、挙げたい。『春いちばん―賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路』。2年前に出ました。賀川豊彦は1888年に生まれて、1960年に亡くなった昔の人ですけど、キリスト教徒で、神戸でスラム活動をしたりとか、生活協同組合をつくったり、農民組合・労働組合のリーダーだった人で、その賀川豊彦の妻の評伝を書いてんねん。賀川豊彦は毀誉褒貶がある人で、いいこともやったけど、いろいろな問題もある。だけど、この本に出てくる賀川豊彦は基本的に滅茶苦茶、いい人。それを読んで僕はものすごく違和感があった。戦争責任の問題とか、優性思想の問題とか、部落問題でも異人種起源説を唱えてたり、いろいろ問題がある。それをブログで書いた。

『春いちばんー賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路』(著者:玉岡かおる、発売日:2022年10月19日、家の光協会)

西岡 

ブログを書くために、全国の賀川豊彦記念館に行ってんはる。そのルポも書いて、すごい。

角岡

賀川豊彦という昔の人が、こんなひどいことをやった、こんなええことをやったと言いたいわけじゃない。賀川豊彦を今書くときに、賀川思想を今どう考えんねん、ということに気を付けて、書かなあかんわね。戦争犯罪とか、優性思想とか、今から見たら差別的なこととか、賀川思想がそのまま出てくるような本を書いたら、それは問題やろとものすごく憤っている。

西岡

僕は共感してますよ。社会学者の上野千鶴子さんは絶賛されていますけど。

角岡

彼の思想や業績を今、どう捉えるか、どう表現するか。今、オッペンハイマーの映画が上映されていますが、オッペンハイマーをどう描くか、全く一緒やと思うねんね。

松井

終りの時間が近づいていますが。

西岡

おすすめの本を何冊か持って来たんで。思い出の本を挙げてくれと言われた時に、挙げるのがこの本です。黄民基さんの『猪飼野少年愚連隊 奴らが哭くまえに』。20年経って、『完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭くまえに』が出ました。完全版には黄民基さんがちっちゃかった頃の写真が出ていて、感動したんです。

『完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭くまえに』(著者:黄民基、発行日:2016年9月21日、講談社+α文庫)

〈昭和30年代、大阪・猪飼野――当時一千余人の構成員を擁したといわれる“明友会”は、猪飼野がうみだした朝鮮人愚連隊だった。しかしその明友会は、昭和35年、山口組との抗争に敗れ壊滅。三丁目長屋に住む十代のノブオ、ヒウォン、ミツアキ、ヨーカ、わたし、そしてリーダー格の百番地のマサオたちは、時代と地域の色濃い空気に翻弄され影響を受けながら、やがてそれぞれの道を突き進んでいく〉

最近、読んだ本で、宮本信芳さんの『釜ヶ崎に、グランマ号上陸す』。つい最近、宮本さんに会うて、今の釜ヶ崎を案内してもらったんですけど、神奈川出身なんですけど、流れ流れていく様子が最高におもしろい。

『釜ヶ崎に、グランマ号上陸す: チェ・ゲバラの最も出来の悪い弟子になるまで』(著者:宮本信芳、発行日:2022年5月24日、東方出版)

〈横浜生まれの不良少年が大阪・釜ヶ崎に流れ着くまでの波乱の人生を赤裸々に描く。児童養護施設・日本水上学園での生活、タバコ、シンナー、窃盗。日本社会事業大学を出て身体障害者授産施設へ就職した後、キャバクラ業界に転身。アルコール依存、サラ金の多重債務、自己破産、結核。会社の金を持ち逃げして釜ヶ崎へ。逮捕されるも、起訴猶予で釈放。以後釜ヶ崎に根付き、居酒屋を営みながら、地域の社会運動に関わる。宮本(通称・新井)信芳の人生遍歴は昭和から平成の、一つの社会・世相史でもある〉

最後に、講談社本田靖春ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『黒い海ー船は突然、深海へ消えた』。著者は伊澤理江さん。僕らの業界では新人さんなんです、言うたら無名のライターさん。もう忘れられている、太平洋上で起こった海難事故を追い続ける過程でだんだん、国防の問題が見えてくる、ものすごい本です。

『黒い海―船は突然、深海へ消えた』(著者:伊澤理江、発売日:2022年12月23日、講談社)

〈その船は突然、深海へ消えた。沈みようがない状況で。本書は実話であり、同時にミステリーでもある。2008年、太平洋上で碇泊中の中型漁船が突如として沈没、17名もの犠牲者を出した。波は高かったものの、さほど荒れていたわけでもなく、碇泊にもっとも適したパラアンカーを使っていた。なにより、事故の寸前まで漁船員たちに危機感はなく、彼らは束の間の休息を楽しんでいた。周辺には僚船が複数いたにもかかわらず、この船ーー第58寿和丸ーーだけが転覆し、沈んだのだった〉

角岡

アカン本、まだ言うてないやつがあって。杉田水脈さんの『民主主義の敵』『なでしこ復活 女性政治家ができること』『なぜ私は左翼と戦うのか』、是非、じっくり読んで。これ読んだら、どれだけ、スゴイ人かようわかる。同性愛は若い頃にかかる病気やから大人になったら治ります、みたいなことを書いています。

松井

一冊ずつの紹介はいいですか。

西岡

もう、けっこうです。こういうのを読めるって、一つの才能やん。

角岡

以上です。

●編集担当:文箭祥人

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