「アベンジャーズ・シリーズ」最上級の面白さ!全編に「映画」の愉しみが充満する『サンダーボルツ*』 園崎明夫

  • URLをコピーしました!
(L-R): Ghost (Hannah John-Kamen), Taskmaster (Olga Kurylenko), John Walker (Wyatt Russell), Bucky Barnes (Sebastian Stan), Alexei Shostakov/Red Guardian (David Harbour), and Yelena Belova (Florence Pugh) in Marvel Studios’ THUNDERBOLTS*. Photo courtesy of Marvel Studios. © 2024 MARVEL.

マーベル・スタジオ制作の「アベンジャーズ」シリーズ最新作で、新チーム「サンダーボルツ」誕生の物語。シリーズの変遷との相関とか、キャラクターの過去作との因果関係とか、「アベンジャーズ」ファンならではのトリビアとか、楽しみ方は多種多様かとは思いますが、何はさておき、独立した一本の映画作品として、抜群に面白く、「映画」の愉しみが高濃度で充満している2時間です!

全編見どころの連続で、ストーリー・テリング、キャラクター造形、アクションの切れ具合、すべてがハイ・クオリティな一級の娯楽映画です。近年のマーベル作品は、ともすればシリーズ過去作との緊密な繋がりや独自の世界観が大前提になっているなど、もちろんそれはそれでマーベル・スタジオの高度な達成ではありますが、長年のコア・ファンと最近観始めた観客では作品の楽しめ方がだいぶ違ってきているような。ところが、この『サンダーボルツ*』は、誰が観ても、「アベンジャーズ」大好きな人も、MCU情報満載のひとも、逆にマーベル初めてという人も、必ず楽しめます!間違いなく!ジェイク・シュライヤー監督自ら「過去のマーベル映画を観ていなくてもOK」とコメントしているとのことですから。

『ブラック・ウィドウ』でエレーナが良かった!という人でなくても、今作の圧倒的魅力を放つフローレンス・ピューに心惹かれないひとは恐らくいないでしょう。挫折した元キャプテン・アメリカ、孤独を生きるゴースト、エレーナの父親(役)レッド・ガーディアン、孤高の戦士ウィンター・ソルジャー、それぞれが忘れがたいキャラクターとして心を掴みます。彼らメンバーそれぞれが何らかの深いトラウマを抱え込んでいて、そのキャラクターの描き方も、こうしたSFアドベンチャー映画で可能な限りの見事な人間ドラマとして共感できます。

また、そんな彼らであればこそ、最強のヒーローでないがゆえに、アクションシーンそのものがリアルな感触の魅力を湛え、演出テクニックが映えて素晴らしい!生身のアクションとCGの融合バランスなど、映画的に美しく多様なバリエーションのアクション表現が全編で堪能できます。

Yelena Belova (Florence Pugh) in Marvel Studios’ THUNDERBOLTS*. Photo courtesy of Marvel Studios. © 2024 MARVEL.

さらに、ロシアの暗殺者養成機関で育てられ、疑似家族のなかで生きてきたエレーナが、チームと物語の中心にいることで、観客が感じる彼らとその物語への共感は、おそらくは分断と差別、貧困や局地紛争に苦しむ、私たち観客が暮らす今の世界への想いや弱者への共感に、どこかで確実に繋がっているような気がします。そしてそれは、現在のディズニー映画がすべての作品を通じて観客に伝えたいと願っている、とても大切なビジョンなのではないでしょうか。

『サンダーボルツ*』の*印が何を意味しているのかという観客の疑問について、マーベル情報によれば、この記号(アスタリスク)は(仮タイトル)という意味を表すらしいです。だとすると、別に本当のタイトルがあるということですよね?かなり気になりますが・・・。映画館で『サンダーボルツ*』公開中に題名が変わるということは、まさか無いとは思いますが(あったら映画史上初!)、さすがに凄いマーケティングだなあとは思いますね。

なにはともあれ「アベンジャーズ」シリーズは、「この作品から新しいステージに入った!」と言っていいのではないでしょうか。少なくとも「ここから、アベンジャーズやサンダーボルツの映画観始めよう」という観客は生まれるような気がします。そして、現代世界に向けたディズニー・ビジョンを受け止めてくれる観客が増えていってほしいなと心から思います。

毎日新聞大阪開発株式会社エグゼクティブ・プロデューサー 園崎明夫

●『サンダーボルツ*』 5月2日より全国上映中

あわせて読みたい
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次