アマゾン奥地の狩猟採集民と暮らしを共にするなど、自然と人との関係を探究する探検家にして医師でもある関野吉晴氏の初監督作品。
おそらく今まで映画で描かれたことのない、前代未聞(たぶん)の驚くべき表現に満ち、知的好奇心を刺激してやまない映像の連続で、なんと「文部科学省選定 少年向き/青年向き/成人向き/家庭向き」とのことで、画期的な「学習教材」の誕生でしょう!
映画には、関野氏と語り行動を共にする貴重な賢人が3人登場します。
野糞をすることに頑なにこだわって半世紀、自ら「糞土師」と名乗る伊沢正名氏。誰でもいつでも野糞ができるようにと、山一つ購入したというのも凄い。
また、うんこから生き物と自然の関係を考察する生態学者・高槻成紀氏。
そして他の生物の死体を食べて生きる生き物たちを執拗に観察し細密絵画で表現する、絵本作家の舘野鴻氏。
「うんこ」と「死体」に深く関わる3人の人物との出会いと発見が、驚異的な科学映画・刺激的な哲学映画として、目を見張る表現に結実しています。
映画館のスクリーンから匂ってきそうな人の排泄物や生き物の死骸など、普通はできれば鑑賞したくない被写体が全編に登場しますが、不思議なもので、しだいに慣れてきます。その体験もなかなかに興味深いものですが。
そして登場人物たちの素晴らしい知見に満ちた言葉に耳を傾け、いろいろ考えながら観ていると、「うんこ」も「死体」も、地球にとって、人間にとって、どれほど貴重な大切なものかが、今更ながら納得されてきます。「持続可能」な地球の生態系のことを、少しでも考えれば、きわめて当然のこと、当たり前のことにあらためて気付きます。
映画の中の会話にも出てきますが、私たちは「うんこ」も「死体」もできれば自分の暮らしから遠ざけたい。それが「快適な生活」だと普通に感じ、考えている。
その意識の根本にこの映画は、強く深く刺さってきます。幼い子供たちが何故「ウンチ」や「オシッコ」という言葉が好きなのかも、なんとなくわかってきます。
誰でも「うんこ」はするし、人はいつか必ず「死体」になる。
そのことの孕む様々な「意味」が全編に漲る、映画史上唯一無二のドキュメンタリー映画だと思います。
●毎日新聞大阪開発エグゼクティブ・プロデューサー 園崎明夫
〇「うんこと死体の復権」 8月3日より全国順次ロードショー 関西では、8月23日(金)より京都シネマ、8月24日(土)より大阪・第七藝術劇場で公開。
「うんこと死体の復権」公式サイト
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